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獣医師による水と衛生の話 第15回「身近に潜む、ノンエンベロープウイルス」

前回は、エンベロープを持たないウイルスについてお話ししました。

ウイルスの中には、外側を包む脂質の膜を持たないものがあります。

こうしたノンエンベロープウイルスには、消毒薬に対して比較的強いものがあります。

では、実際に私たちの身近には、どのようなウイルスがいるのでしょうか。

今回は、人と動物、それぞれの身近な例を見てみましょう。


身近な強敵① ノロウイルス

まず、人にとって身近なウイルスから。

冬になると、ニュースなどで「ノロウイルスによる感染性胃腸炎」という言葉を耳にする機会が増えます。

ノロウイルスは、ノンエンベロープウイルスです。

つまり、前回お話ししたような脂質の膜を持っていません。

そのため、エンベロープを持つウイルスと比べて、環境中で比較的安定しています。

ここで問題になるのが、消毒の難しさです。

アルコールだけでは十分とは限らない

エンベロープウイルスでは、アルコールによって外側の脂質膜が壊されることが、不活化につながります。

しかし、ノロウイルスにはその膜がありません。

そのため、アルコールだけでは十分な効果が期待できない場合があります。

ノロウイルスへの対策では、適切な消毒剤を選ぶことに加えて、汚染された場所を適切に処理することが重要になります。


身近な強敵② 犬パルボウイルス

そして、獣医療の現場でも、ノンエンベロープウイルスが大きな問題になることがあります。

その代表例が、犬パルボウイルスです。

犬パルボウイルス感染症は、特に子犬で重篤な症状を引き起こすことがあります。

そして、このウイルスもノンエンベロープウイルスです。

つまり、環境中で比較的安定しており、消毒に対しても抵抗性が高いウイルスの一つです。

犬パルボウイルスが厄介なのは、感染した犬を隔離すれば終わり、というわけではないことです。

感染動物から排出されたウイルスによって、

  • ケージ
  • 床
  • 診察台
  • 器具
  • 人の手や衣服

など、さまざまな場所が汚染される可能性があります。

そのため、動物病院では感染動物の隔離と、環境の適切な消毒を組み合わせることが重要になります。


ノロウイルスと犬パルボウイルス

人と動物で対象は違いますが、共通しているのが、

「ノンエンベロープウイルスである」

ということです。

エンベロープを持つウイルスなら、外側の膜が消毒の重要な標的になります。

しかし、ノンエンベロープウイルスには、その膜がありません。

その代わりに、比較的丈夫なタンパク質のカプシドがウイルスを守っています。

この構造の違いが、消毒の難しさにつながっています。


まとめ

ノロウイルスや犬パルボウイルスは、どちらもノンエンベロープウイルスです。

エンベロープを持たないため環境中で比較的安定しており、消毒に対しても抵抗性が高いものがあります。

そのため、アルコールだけでは十分な効果が期待できない場合があり、対象となるウイルスに適した消毒方法を選択することが重要です。

人の生活の中でも、動物病院の中でも、

「消毒に強いウイルス」は決して遠い存在ではありません。

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