前回は、エンベロープを持たないウイルスについてお話ししました。
ウイルスの中には、外側を包む脂質の膜を持たないものがあります。
こうしたノンエンベロープウイルスには、消毒薬に対して比較的強いものがあります。
では、実際に私たちの身近には、どのようなウイルスがいるのでしょうか。
今回は、人と動物、それぞれの身近な例を見てみましょう。
身近な強敵① ノロウイルス
まず、人にとって身近なウイルスから。
冬になると、ニュースなどで「ノロウイルスによる感染性胃腸炎」という言葉を耳にする機会が増えます。
ノロウイルスは、ノンエンベロープウイルスです。
つまり、前回お話ししたような脂質の膜を持っていません。
そのため、エンベロープを持つウイルスと比べて、環境中で比較的安定しています。
ここで問題になるのが、消毒の難しさです。
アルコールだけでは十分とは限らない
エンベロープウイルスでは、アルコールによって外側の脂質膜が壊されることが、不活化につながります。
しかし、ノロウイルスにはその膜がありません。
そのため、アルコールだけでは十分な効果が期待できない場合があります。
ノロウイルスへの対策では、適切な消毒剤を選ぶことに加えて、汚染された場所を適切に処理することが重要になります。
身近な強敵② 犬パルボウイルス
そして、獣医療の現場でも、ノンエンベロープウイルスが大きな問題になることがあります。
その代表例が、犬パルボウイルスです。
犬パルボウイルス感染症は、特に子犬で重篤な症状を引き起こすことがあります。
そして、このウイルスもノンエンベロープウイルスです。
つまり、環境中で比較的安定しており、消毒に対しても抵抗性が高いウイルスの一つです。
犬パルボウイルスが厄介なのは、感染した犬を隔離すれば終わり、というわけではないことです。
感染動物から排出されたウイルスによって、
- ケージ
- 床
- 診察台
- 器具
- 人の手や衣服
など、さまざまな場所が汚染される可能性があります。
そのため、動物病院では感染動物の隔離と、環境の適切な消毒を組み合わせることが重要になります。
ノロウイルスと犬パルボウイルス
人と動物で対象は違いますが、共通しているのが、
「ノンエンベロープウイルスである」
ということです。
エンベロープを持つウイルスなら、外側の膜が消毒の重要な標的になります。
しかし、ノンエンベロープウイルスには、その膜がありません。
その代わりに、比較的丈夫なタンパク質のカプシドがウイルスを守っています。
この構造の違いが、消毒の難しさにつながっています。
まとめ
ノロウイルスや犬パルボウイルスは、どちらもノンエンベロープウイルスです。
エンベロープを持たないため環境中で比較的安定しており、消毒に対しても抵抗性が高いものがあります。
そのため、アルコールだけでは十分な効果が期待できない場合があり、対象となるウイルスに適した消毒方法を選択することが重要です。
人の生活の中でも、動物病院の中でも、
「消毒に強いウイルス」は決して遠い存在ではありません。
